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<其の一 人はなぜ商売をするのか> 社会へ出た人の多くはおそらく職を他に求めるであろう。つまり公務員やサラリーマンとして幾ばくかの賃金をもらい生活の糧を得る。しかし資本を集め商売する人や、職半ばにして自己資金で独立する人もいる。仮に同じ仕事をするにして職場から得る賃金と、自営業として得る利益はいかに比較すればよいのであろうか。勿論生活の自由度や人間関係も加味しなくてはいけないのであるがここでは純粋に経済的要素のみで考えてみる。つまりは勤め人と自営業の「損益分岐点」である。 例えば年収500万円の勤め人Aさんも、独立するBさんも共に1000万円の貯金がありAさんは株や債券で運用しその利回りは2%と仮定する。一方Bさんは1000万円を投じて商売をスタートさせ多くはないが安定した利益が出せるまで成長した。そこでBさんは「俺は独立して良かったのか、これくらいの利益なら勤め人でももらえそうな気もする」と考え始めた。 そこで二人の損益を比較してみよう。Aさんの年収は500万円なので、まずBさんの利益から500万円を引く。ここでマイナスが出れば明らかにAさんの方が得をしているが、500万円を引いた残りがあればそれが資本の1000万円に対していかほどの利回りになるのかが重要となる。つまりAさんは同額の1000万円で2%の利回りを得ているのでBさんの利回りがそれ以上ならBさんが商売を始めたことは間違ってなかったと言えるであろう。 人の幸福度は上述のごとく単純には計れはしないが、商売を志す人はまず自己の人件費を見立てそれ以外にどれだけ利益が得られるのかを考えなければならない。経済的に純粋比較すると、利益が自己の労働の対価と同価値であれば必ずしも商売する必要はないのではなかろうか。 「ではどれくらいの利回りがあれば商売する価値があるのか」と皆様は問うであろう。答えは「時代と経済状況によって変わる」と言うしかない。単純に言えば定期預金の利率は、国債の利率は、外貨預金ならば、マンション経営は、つまり自己の労働がほとんど必要ないものに投資をしたときの利回りが1つの基準になると私は考えている。 平成18年12月 |
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< 其の二 価格と値付け > さてものを売ろうとすると値段を付けなければならないが何故ものには値段がは着いているのだろうか「当たり前のことを聞くな」と言われそうだが値段が太古の時代からあったはずがない。狩猟時代に別れを告げた人々は生活が維持できそうな場所に定着しそこから得られるものを生活の糧として生きててきた。やがて近隣の人々とお互いに欲しいものを融通し合う物々交換時代へと変わる。ここに商売の原点を見るのである。つまり自分たちが比較的安易に得られるものとなかなか得られなく且つ必要なものとを交換する方がよりよい生活が出来ることを知るのである。 そして人々は、最初は近隣から近隣へと交換していたものが遠隔地へ行けばもっと良質で少ない交換物で得られることを知る。しかしはそんな遠隔地へおいそれと交換物を運べる術はない。そこで多くの人々が普遍的に同価値を認めるものを交換物の代用品として使用するに至る。例えば子安貝に代表される貝とか又は、貴重な石や金、銀、銅などである。これらの代用物と例えば米との交換比率を一定にすればここに価格が生まれる。すなわち貨幣である。やがて 価格と貨幣が生まれたことにより人々はより多くの貨幣を求め効率的な商売を目指し、アラビア人、ペルシャ人、中国人のような商人国家も生まれ大航海時代へと入ってゆくのである。そしてこの価格は多くの謎をも生んでいく。 小売業は入り口としては分かり易い商売である。問屋で100円の価格が付いているものを60円で買って問屋の決めた価格で売ればそれなりに成立し仮に自分で輸入したものであっても市場へ行けば類似物の価格を知ることが出来、株式や不動産やサービスのように買ったものや得たものをいくらで売ればよいのかと迷う必要がないのである。これを「入り口としては」前置きしたが小売りは奥へ進めば進むほど迷路のように複雑にいろいろな要素が絡んでくる商売でもある。 値段を付けるのは自由であるが、内装やサービスに付加価値を付けない限りその値段が市場価格(相場)とあまりかけ離れていてはものは売れない。80円の豆腐と500円の豆腐があるとして、本来の豆腐の価値は「腹を満たす」「栄養をとる」はずである。6倍の価格の開きがそのまま価値観を反映しているとはとても言えないが、つまり6倍の栄養があったり、1ヶの豆腐で6倍の満腹感があろうはずはない。では何故500円の豆腐が売れるのであろう。それは購買者にとって6倍の精神的な満足感が得られるからである。この80円と500円の豆腐の製造原価はせいぜい2倍が限度であろう。であれば500円の豆腐を売る方が商売としては効率がよいことは自明の理であるが、多くの製造者は80円の豆腐を造り多くの購買者は80円の豆腐を買う。消費者に500円の豆腐を買ってもらうのにはそれなりの演出と仕掛けが合ってのことであり、その付加価値を作り出す商売の醍醐味といえるであろう。 ここに製造原価かほぼ同じのTシャツがある。デパートでは5,900円で売られているがス−パーでは1990円であり、専門店のセールでは3枚990円になることもある。さて商売を始めようとするあなたはどちらの道を選ぶのか。一度1,990円の値付けをすればその道から引き返すことは非常に難しくなる。つまり顧客に店の価格帯をイメージ付けてしまうからである。店頭に1,990円のTシャツがディスプレーされていれば値札の見えない奥のGパンの価格も「2,900円かな」と、想像されてしまい、高級素材を使った14,800円のGパンだといくら力説しても顧客を納得させることは一般的に不可能である。顧客はこの店で買うGパンは2,900円であって14,800円ではないと思いこみ、入店する前に購買可能な価格が決定されているのである。 しかしデパートで商売するのとスーパーで商売するのとで価格は3倍の開きがあっても、電気代や人件費に3倍の開きはない。よって売上が3分の1であって良いはずはない。答えは単純である、3倍の枚数を売ればよいのである。つまりデパートのハンガーに10,000円のブラウスが5枚掛かっていればスーパーのそれには2,900円のブラウスを18枚掛ければよいのである。この考え方を極論とかそんな単純なものではないという批判は当然あるであろう。でも敢えて言えば単位面積あたりの上代の合計が同じであれば売上も同じになり、更には売上は単位面積に上代の合計に比例すると言っても過言ではないであろう。 平成19年2月 |
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< 其の三 損益分岐・・・如何にして儲けるか > 敢えて副題で「如何にして儲けるか」と表記したが、正しくは「どうしたら損をしないか」と考えなければならない。人は商売を始める時「これくらい売れれば」 「これくらいは売れるだろう」と考える。つまりその人の意識の中で商売は始まっていて、その商売のデメリットは考えず、儲かるであろう条件のみ考えて自分を納得させようとする。既に某雑誌に寄稿した内容であるが、開店前の条件交渉で「現状復帰義務」や「退店予告」の項目について見落とす人が多いのは、その店を閉店する場合があるとの発想が欠落しているからであり、儲からなかったらどうするー儲からなければやめる・・常にこのことを念頭において商売は始めなければならない。 小売りを平たく言えば、買ってきた値段より高く売ることであり、買いと売りの差額で経費を払い自分の生活の糧を得るに尽きる。かくの如く言えば一行で終わるがこれを実行するのが難しく多くの商売人が死屍累々の惨状を呈してきた。では儲けるためにはどうすればよいか、簡単に言えば出来るだけ安く買って出来るだけ高く売ればよいのであるが、この自由主義市場経済の中ではそうはいかず買いにも売りにも世間の通り相場がある。そこで買値と売値と経費を大雑把に歩率化してみると良い。つまり、売値が100%であるので買値が60%であれば経費と利益は40%でなければならない。更に細かく分類すれば人件費が20%、家賃・電気・電話・内装等の償却などのその他の経費が20%と設定する。オーナー自ら店に立てば人件費の20%がオーナーの利益であり、スタッフを雇えばその他の経費20%が損益分岐となる。 これが商売を始める最低限の損益分岐ラインと私は考える。具体的に説明すると、スタッフの人件費の合計が50万円とすれば、それが売上の20%でなければならないので50万÷20%=250万と、売らなければならない数値が出てくる。 上記の計算はもっとも単純な考え方であるのでもう少し具体的に説明する。仮に人件費50万円その他の経費65万円とする。すると50万+65万=40%にならなければならず、115万÷40%で目標売上は2,875,000円となる。しかしこれでは利益は出ない。よって2,875,000円以上売って利益を出すか、又2,875,000円しか売れないのであれば仕入れを60%以下にするか経費を40%以下にするしかない。 数式化すれば(予測される経費の合計)÷(平均粗利率)=最低限売らなければならない売上となる。又、SCのように家賃が歩率の場合は、仮にそれを10%とすれば歩率化できる部分が60%(仕入れ)+10%(家賃)=70%になるので平均粗利率を30%として計算しなければならない。 これによって「300万売れれば」とか「300万ぐらい売れるだろう」がいかに安易な損益の考え方であるかが解るであろう。 平成19年5月 |
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< 其の四 さてどこにどうやってお店を出すか > 出店する立地を大別すれば(1)路面店ー商店街などの道沿い (2)ロードサイドー郊外などの幹線道路沿い (3)ショッピングセンター及び駅ビルー開発業者(デベロッパー)の運営する商業施設 (4)百貨店 (5)テナントビル 等があげられる。各々に長短あるが次にそれについて述べる。 (1)路面を考える タイトルの「小商売人」が出店を考えるとき(2)は大きすぎ(3)と(4)と(5)は紹介者なしにコンタクトすることはほぼ不可能なのでおおよその人が路面店を考えるであろう。路面店であれば地元の仲介業者の案内で保証金又は敷金と礼金さえ払えば一部を除けばほとんどの業種が可能である。しかし、この簡便であるが故に多くのデメリットを含んでいる。ではこれを列挙してみる。 1.更新毎に更新料が大家と仲介者に発生する・・・・(3)(4)では不要 2.退店時に保証金若しくは敷金の一部が償却される・・・・(3)(4)では特別な条件を除いて全額返金される。 3.保証金若しくは礼金、又はその両方が必要・・・・(3)は原則的に必要であるがない場合もある。(4)は基本的に無しである。 4.空調、トイレ、水道、ガスなどの設備が仕上がってない物件が多い・・・・(3)(4)ではランニングの費用は徴収されるが出店時には用意されている。 5.売上は天候によって大きく左右される・・・・(3))(4)も左右されるが路面店ほどではない。 6.契約後に発生する費用がある、例えば商店会費、イベントの協賛金、ゴミ処理費用・・・・(3)(4)では契約前に全ての費用が説明される。 7.新宿、渋谷などのターミナルの商店街を除くと通行人は買い物が目的ではない・・・・(3)(4)では一応なりとも買い物が目的で施設に入ってきている。 8.小商売人にとって売上に対する家賃比率が大きい・・・・最低保証のない場合の(3)と消化仕入れが原則の(4)では売上に準じて家賃が変動する。 *路面店のオーナーは大手が採算がとれるであろう上限に家賃を設定する傾向がある。又は地元の仲介業者はオーナーから恒常的に手数料を得るために、つまり、仲介の専任権を得るために高めの家賃を提案することが多い。極言すればオーナーや仲介業者にとってテナントの採算は視野の外でありもっと言えば採算がとれずテナントが入れ替わるたびに礼金と保証金の償却分が入るわけである。 *最低保証と消化仕入れは別項で説明。 平成19年5月 |
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(2)ショッピングセンター( 以下SC )とは 上述のSCは広義のSCであって以下のものを含んでいる。
これらを横系列とすれば以下に述べる分類が一部重複するが縦系列といえる。
何故このような一見無意味な分類をしたかといえば、上段の横系列はMD・商品構成そして下段の縦系列は条件交渉に関わってくるからである。ファッションビルとスーパー内の専門店では当然として商材は異なってくるし、又同じファションビルでもギャル系なのかエレガンス系なのかミックスなのか見極めが必要となる。そして下段の縦系列は社風というか「利潤」に関する考え方にかなりの相違点が見受けられるのである。極論すれば坪当たりの収益が社内基準を越えれば商材にはこだわらない会社もあれば、利益も大事だが商材にはもっとこだわりたい会社もある。 平成19年5月 |
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(3) SCを選ぶ SCから出店の要請があった時出店の諾否はどこで決めればよいか。チェーン展開をしている店舗開発のベテラン担当者であればその図面を見れば大体の状況は把握できるであろうが、そうであってもそうでなくても現地調査を丹念にすべきであり、以下に述べるキーポイントをしっかり見て欲しい。 1>売上の比較 SC自体の売上が良くなく毎月テナントの売り上げ状況を開示していないところもあるが、通常のSCは各テナントへそれを開示している。その売上報告を入手することは業界の人脈がなければ難しいが、もし出来れば当該SCへ出店しているA店と有名SCへ出店している同店Aの売上を比較することにより、その有名SCと当該SC の売上の比較が出来る。同じく自社が出店しているSC にB店があり当該SCにもB店が出店しているのであればその売上を比較すれば自店の当該SCでの売上はたやすく予想できるはずである。 2>在庫状況 当該SC内の店舗の在庫の多寡を見ればそのSC自体の売上状況がわかる。いかなる経営者も売れない店舗には多くの在庫を持ちたがらないものである。特に2−3月、8−9月の商品の入替時に不自然なほど在庫が薄い店舗が目に付けば、明らかにそのSCは売れていないと判断せざるを得ないであろう。 3>SC内の生鮮売り場を見る 平日の午前中に生鮮売り場へ行ってみよう。売れているSCであれば弁当や寿司は山積みされているし、主たる需要が夕食である刺身や惣菜もそこそこのボリュームで並べられているが、一方売れていないSCに於けるそれは特に腐りやすいものは棚の手前に形ばかりに並べられているはずである。又、生鮮売り場の入り口近辺は「お買い得商品」コーナーであるが、そこに生ものではなく、乾物などの腐りにくい商材が積まれてあればそのSCの売上は苦戦しているとみなしても良いであろう。 4>出店形態 あとで詳しく述べるがSCの契約には大きく分けて2通りある。1つは通常の賃貸契約(本契約)もう一つは一時的に出店する催事契約である。後段の臨時的な契約は文字通り臨時なので期間が限られ出店者も店舗に大きな投資はかけられない。この催事契約による出店者が多いSCは近々大きなリニューアルがあるか、又は閉館の予定があり本契約が出来ないのか、出店者が本契約を避けるほど売上が悪いかのいづれかである。ではその催事契約出店者を見分ける方法は何であろう。まず看板と什器を見てみると、看板がSCによる手書きであったり、カッティングシートによる簡便なものであったりする。又什器は備え付けではなく移動式什器が主たる場合が多い。特に壁面什器が移動式であればまず臨時契約であると判断して間違いはない。その他に什器は新しいが床壁天井が汚れている等があげられる。 5>売れていないSCの特徴 売れていないSCにしばしば見られる状況を数例あげておこう。 1)従業員通路への入り口近辺に段ボールが積んである。 2)従業員専用通路などお客様から見えない場所が雑然として整理整頓されていない。 3)お店のスタッフがレジ内に腰掛けて、みるからにやる気がない(店が売れていないのを一番知っているのはその店のスタッフ)。 4)具体的に書けば失笑を買うので一言で言うとSC自体に予算がなく設備、内外装などのメンテナンスを怠っている。 以上現地調査の重要さと見るべきポイントについて述べてきたが、SCにも色々性格があって例えば郊外で土、日行き場のないファミリーが多く集まる土日型SCや、生鮮が強く平日は入店者が多いが土、日は近くのターミナルへ出かけてしまう立地の平日型SC。日中は人が少ないが夕方から帰路立ち寄るOLがどっと増える郊外の駅ビル。従って現地調査は平日の午前、午後そして土日のいずれかは必ずすることをお勧めする。但しいかに人が多くてもそれが「買う客」でなければ意味をなさないのは理の当然である。買わない客とは、平日行くところがなく売り場の休憩所にずっと座り込むご隠居さんや学校をさぼってゲーセンにたむろする中高生の群れである。 (4) SCから選ばれる 「どんなSCがいいですか」と私が出店希望者に尋ねると異口同音に「人が多いところ」と言われる。誰だって人が多くて売れるSCが良いに決まっている。この会話を芸能界に当てはめてみよう。テレビのプロデューサーが新人歌手に聞く「どんな番組に出たいの」世間知らずの10代の歌手は答える「先ず、紅白かな」........ この会話を聞いて如何に「人の多いSC」が一般的に無理難題かがわかってもらえると思うがいかがであろう。ミリオンセラーの歌手や大御所と言われる歌手、SC業界に置き換えれば売れているショップ、ブランドを扱うショップが「紅白に出たい」とか「人の多いSC」とか言うのは当然の欲求であるが、新人歌手や名もないショップがいきなり「紅白、ルミネ・アルタ・ラフォーレ」を口に出すのは高望みと言われても仕方がない。新人歌手はラジオ局廻りや、地方のレコード店廻りから徐々に知名度を上げテレビ番組のプライムタイムに攻め上っていくのである。勿論一曲目が大ブレイクして一気に「紅白」へ駆け上るケースもあるであろうが。ショップ経営者も同じ事が言える。ではどうすればよいのか、「世に出ることは行動することから始まる」の原則通り先ずは最低限採算のとれる立地で1店舗出すことが肝要である。そのショップがSCの店舗開発者やリーシング関係者の目にとまることもあれば、自らSCへの出店活動の格好のサンプルとなるからである。又、その商材(MD)が大ブレイクしてマスコミの耳目を集める可能性だってある。 路面店は満額の条件を承諾すればよほどの場合を除いていかなる素人でもいかなるMDでも出店できるが、一定水準以上のSCは「金は出す」だけでは出店不可でありMDや内装、そして経営練熟度などの厳しい審査を受けて出店可能の段取りとなる。SCが探しているショップは「人が多いSC」に出店したい謂わば他力本願的な出店者ではなく、時代のトレンドを先取りしたMDを絶え間なく開発しているショップ、SCのコンセプトに合致し欲を言えばフロアのモデルショップになれそうなショップ、或いは自ら人を集めてくれる集客装置になれるショップを探し求めているのである。 つまり「人の多いSC」等と甘えたことを言うのではなく、出演以来が引きも切れない、SCから「呼ばれる業態」を目指さなくてはならないのである。 (5) SCとの条件交渉 路面店に出店する際は不動産業者が条件一覧表を持ってくる。家賃は、敷金は、契約期間は、償却は、原状復帰は等々信用できる仲介業者の説明を聞けばほぼ100%問題なく自ずからオーナーと直接交渉する必要もなければ余地もない。しかしSCは前述したように「金は出す」だけではない交渉事が山ほど有り、相手は交渉のプロであって新人の出店者を言いくるめるのは赤子の手をひねるが如くた易いのである。よってここではSCとの特殊な契約内容を説明するが、あくまで一般的な内容であって地方やSCの成り立ちによって例外もあることはご了承願いたい。 1> 契約の種類
SC独特の家賃設定形式として最低保証がある。つまり出店者が1ヶ月の売上をSCに保証する仕組みである。SCの家賃は上記の a)、b)及び c)では固定家賃ではなく売上に対する歩合(歩率)で決まるのが一般的である。例えば売上300万円の保証をして歩率が10%の契約をすれば売上の如何を問わず300万 x 10%=30万となり、保証した売上を超せばその売上の10%となる。言い換えれば固定家賃30万円プラス最低保証を超した分の10%と言うことである。上記の d)は家賃という考えでなくあくまでも仕入れなので最低保証は発生しない。極々希な場合であるがSCの館長が自分の売上を水増しするため「最低保証に達していない部分は現金でレジに打ち込んでくれ」と言う極悪非道なケースもあるので注意。 3>退店予告 契約期間内に退店する場合はある一定の予告期間をおいてなされなければならない。この退店予告期間は契約書上に記載されているが路面店は3ヶ月、上記の a)では6ヶ月が一般的である。 b)は特に取り決めがない場合が多く通念上1ヶ月であり c)は原則として中途退店は認めない。 d)は仕入れ契約なので当事者間の協議となる。大いに留意すべき点は契約期間の決まっている a)、b)及び c)の退店予告期間内の中途退店は残存期間分のペナルティが発生することである。例えば退店予告期間が6ヶ月にも拘わらず退店予告後1ヶ月で閉店した場合残りの5ヶ月分の家賃をSCへ支払う義務を負う。 平成19年7月 |
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<其の五 SCへのアプローチ> 私共へSCへの出店を希望される方は以下の4者に大別される。 1)有名ブランド、ナショナルチェーン・・・・・この道に携わる人ならほとんどが知っている有名店。 2)ブレイク間近、日本初上陸、東京初出店、新進気鋭・・・・・・知る人ぞ知る又はマニアなら知っている及びある地方又はある国では超有名店なのに東京又は日本では意外と知られていない店。 3)催事(臨時出店)主体型・・・・・小売業や商材には詳しいが経済的理由やその他の理由及び考え方で積極的には本契約をしたくない店。最近はこのグループに属す店はネットの方へ流れ気味で全体に少数派になっているが、「磨けば光る玉」はこのグループに最も多く存在する。 4)事業継続困難型・・・・「矢尽き刀折れて最後の一太刀を」と溜め込んだ在庫を手に出店費用のかからないSCを探している店。時代の流れについて行けなくなったメーカーや、百貨店催事では条件が合わなくなったベテラン経営者(言葉に気を使っているの分かります?)に多く見受けられる。 では如何にSCへアプローチすれば良いのか各ケース別に述べてみる。 1)の方は当社を素通りしてください。当社が知っている情報の多くはこのグループの方々は既に知っている場合が多く、又SC側から労せず情報が入ってくるのでリーシング会社は不要である。 2)のケースはSCが狂おしいばかりに探しているお店である。特に情報発信地を標榜するファッションビルにとって「奴は俺が世に出したんだ」と一生涯自慢の種になるおいしい存在なのである。よって出店条件は卑屈にならずしかし居丈高にならず相場若しくはそれより若干下あたりを堂々と主張すべきである。私共も喜んでお手伝い致します。 さて3)のケースが私どもにとってあらゆるテクニックを駆使してでも世に出したいお店であり、出店できるSCの幅が一番多いグループである。つまりオーナーとじっくり話し込んで、いきなりプライムタイムデビューなのかはたまたCMデビューなのかやはりセオリー通り下積みから頑張ってもらい様子を見るのか思案のしがいがあるグループなのである。しかし前述したように「磨けば光る玉」があるグループは言い換えれば玉石混淆でもある。 4)このグループの中から私共が出した超好条件を生かして見事に立ち直ったお店もあり、ある程度はこちらの提案に耳を傾けていただければ一律に排除すべき対象とは考えないがその出直しにはかなりの時間と努力が必要であろう事を認識して頂きたい。このグループのオーナはまさか「私は4)型です」とは言わないが、具体的な出店条件のすり合わせの際に他のケースのオーナーとは違う何かを感じさせる事が多々見受けられやがて馬脚を現すのある。 19年8月 |
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小商売人のつぶやき <其の六 SCとは如何に交渉するか> SCが提示してくる条件はSCによって様々である。社風もあれば会社の成り立ちや業態にもよる。建屋の建設費用によってもかわるし営業トップの性格も若干は影響する。消化仕入れが原則の百貨店系は保証金より歩率にこだわる傾向があるし、不動産系やファンド系は坪当たりのコストから算出した家賃/坪の投下資本に対する利回り重視である。義理人情が物を言う昔ながらのSCもあれば店長に嫌われて追い出されるSCもある。駅そばのファッションビルで27、000円/坪を要求されたからと行ってその隣のスーパーの専門店コーナーに同等の家賃を払う必要がないのは自明の理である。共益費もバブル時代に作られた豪華なSCとチープな内装の量販店では3−7倍は違ってくるし、個別経費も同様にSCの違いによって大いに異なってくる。例えば電気代でも大口需要家のSCでは単価は安くなり、電鉄系も当然安くなるが小さな単独のSCでは割高となる。 これ以外にもSCが提示してくる数字のトリックにも注意を払わなければならない、何しろ相手は百戦錬磨のタフネゴーシエイターなのである。例えば既述の最低保証{其の四の(5)の<2>を参照}であるが、仮にSCが20,000円/坪を求めているとする、では坪当たりの売上と歩率をいくらに設定すればよいのか、A)200,000円 X 10%、 B)400,000円 X 5%、 C)100,000円 X 20% いずれも答えは20,000円/坪である。 売上が最低保証に達しない場合は確かに全て同じであるが、最低保証をクリアした場合はA)は超した分も10%、B)は5%、C)に至っては20%も払わなければならない。ではこれを踏まえて2,000,000円 X 1% =20,000円に設定すればと考えるのが人情であるが、到底SCが納得しない条件である。歩率は安い方がよい、でもべらぼうな売上は期待できない。そんなときは「逓減(ていげん)」という特例を付けてもらえばよい。つまり「坪当たり200,000円売ることは保証致しましょうでもそれ以上売ったときは200,00円を超した部分は例えば7%に逓減してください」 と云う提案である。 これは催事契約でも応用が出来る。例えば契約更改時にSCが「今までは共益費は歩率の中に入っていましたが、これからは固定で3、000円/坪頂きたいのですが、その代わり歩率を1%下げさせて頂きます」それを受けて「売れてきたから歩率が下がるなら3,000円くらい払うか」と、この狡猾な罠にはまってはならない。300,000円の1%が3,000円である。仮にあなたの店が200,000円/坪の売上とすると家賃は2,000円/坪下がるが新たに共益費を3,000円/坪払うことにより実質1,000円/坪の値上げであると見抜かなければならない。よってこの新条件はあなたの店が300,000円/坪売れることを前提に考慮すべきである。 同じく出店者が陥りやすい錯覚について述べてみる。これからお店を出そうとしているあなたはお店を閉めるときのことは全く頭にない。SCは言う「退店するときは6ヶ月前に文書でお願いします。急にやめられると当社も大変ですから」これを退店予告{其の四の(5)の<3>を参照}と云う。閉店する決心をしたときは経営状況がかなり悪化したときであろう、そこから更に6ヶ月も営業を続けなければならない辛さをよく考えてこの条件を了承しなくてはならない。同様にSCは言う「やめるときは御社がされた内装は元通りにしてください」これは原状復帰である。催事契約ではニュアンスが異なるが、原則はスケルトンへ戻すことである。例外として原状復帰費用をSCへ払ってそのままで退店するケースもあるが、SCによっては退店するたびに同費用を要求しその積立額が遙かに実際の原状復帰費用を上回っていることもあると仄聞する。このように居抜きで出店する場合は現在ある内装の原状復帰義務はどうなっているのかを正確にただす必要がある。これも前述のケースと同じく営業状態が良くない中で6ヶ月の営業を求められ、その上原状復帰の費用が発生する最悪の状況に立ち至ったのである。全ては出店時にまさか売れなくてやめることはないと云う錯覚から始まっている。 最後に出店者側にとっておいしい条件をひとつ紹介してこの項を締めくくりたい。 SCが建物を新規に建て、例えば連休前にオープンすることが既に告知されているとする。開店日は決まっているが最後の一店舗の入居者が未だに決定していない。こんな時は内装、基本照明はSCが負担してくれることが多い。つまり全館の共用部分の床、壁、天井を貼る際に1店舗のそれらを内装業者についでにやらすことはいともたやすいことであり、照明設備も同様である。むろんこれらの費用は内装業者持ちであってSCの腹は何ら痛まない。 以下つづく 平成19年12月 |