続SC出店術 

売れない時代に何処へ出店すべきか 

 梶浦康一

                   「紅白」には最初から出場できません。 

 私の事務所へお店を出したいという若い経営者が毎週のようにやってくるが、確かに感性はよい、商材もなかなか特化され他店との差別化もできてはいる。たぶん店舗もそれなりのものを作るであろうと想像されるのだが、彼らが一様に口を揃えて言うのが出店地である。

 「新宿、渋谷。原宿でも構いません」

 気持ちは分かるが、現在一店舗も持っていなくてどうやってその地域の一番店といわれるデベロッパーを説得できるのか 。出店の希望を受けたデベロッパーは必ずその店舗を現調にいく 、それは必ずしも商材を見るだけでなく、店づくり、他店との競合・差別化、スタッフの接客態度、店内の整理整頓 と総合的に小売店としての完成度を見に行くのである。「紅白」に出場するより先ず足を地に着けて1店舗出店していかにして利益を出すかを習得すべきである。 1店舗目が世間の注目を浴びてたちまちにして「紅白」に出場するというケースも希にはあるが、高額な家賃と厳しい出店条件で宣伝にはなっているが利益を出すどころか他店の利益を喰っている悲惨な例は枚挙するに暇(いとま)がない。

 1,2店舗しか持たない素人同然の経営者と一流のしたたかなデベロッパーのセールストークでは所詮条件交渉が成り立つはずもなく、閉店したくても契約でがんじがらめにされている経営者の悲痛な相談を受けることは1度や2度ではない。

 注)がんじがらめの契約については同誌「SC出店術」にて既述。

 

 自社の商材に自惚れるな。

 出店のジャッジにあたっては家賃とその他の経費を合算して既存店の売上と比較するべきであって、条件が提示されたとき「あの場所ならOO円は売れるだろう」などという安易な予測は決してしてはならない。ましてや、2億円の保証金が3,000万円になる時代である、デペロッパーの「御社は力があるから」という甘言にのってプロパー条件にみだりに同意してもいけない。

 原宿界隈の路面店で家賃相場は坪10万円前後であり、新宿の有名SCで共益費込みで7−9万円、渋谷では同じく6−9万円となる。そしてその相場はこれらの地区を中心として同心円を描き郊外へと広がり下がってゆく。例えば町田は共益費込みで3−5万円、厚木で2−4万円となる。

 この数倍以上の開きのある家賃体系を甘受してあなたのお店はそれに比例した売上が確保できるのであろうか。

 もしあなたに新宿や渋谷の一流デベロッパーから出店要請があったとき冷静に考えて欲しい。自店にそれほどの実力があるのか、なぜ業界新参者の自分に白羽の矢が立ったのか、自分の商材に自信を持つのはよいがうぬぼれてはならない。

 デベロッパーはこう考える。「商材よし、見せ方もよし、ウチの条件に耐えられるか疑問はあるが、間違いなく当社のプロパー条件を呑むだろう」

 これが全ての答えではないが少なくともこの厳しい時代にデベロッパーが出す答えのひとつではある。 

 実力が付くまで見栄を捨てよ。

 上述のSCに出店したい気持ちはよく分かるが、売上の上がらない昨今、先ず利益が出せるかを考えなければならない。

 一流と言われる新宿や渋谷のSCでさえ出店者探しに苦戦している中彼らにできない条件を出せるデベロッパーがいる。それが量販店やGMSである。

 つまりデベロッパーが新館を建設するときから彼我の出店条件の差が付いているのである。土地の収得価格や建設費用を考えても一目瞭然である。

 高額条件で有名なデベロッパーを除けば、交渉に自信のない若い経営者にとっても比較的好条件で出店できるGMSがある。

 その条件とは家賃が坪当たり1−1.5万円、共益費が4−5千円で敷金は原状復帰程度。原状復帰とは閉店時に店舗をスケルトン状態に戻してデベロッパーへ返すことを言う。通常坪当たり5−10万程度の費用である。

 仮に20坪の店舗を出すとして家賃と共益費で30万円強、敷金が100−150万円の負担で済むが、もし同様な店舗を新宿や渋谷のJRの駅ビルにでも出すとなれば家賃と共益費で数倍、保敷にいたっては数十倍から100倍強の条件が提示されるであろう。

 若くて感性ある経営者に忠言申し上げる。

 自社の商材をブランドに育てたい気持ちは痛いほど理解できるが、この時期は利益重視に徹し嵐が過ぎるまでひたすらに耐えなければならない。

 やがて台風一過の陽光と共に、新宿や渋谷の有名SCは実力と体力の付いたあなたを好条件で迎えてくれるであろう。

                                           株式会社 日本ゴーエル

                                                 代表取締役  梶浦康一