|
|
|
平成13年2月号ー8月号 |
|
掲載時の紙面は「口述」ですが本文は梶浦康一のオリジナル文章です |
大店法から大店立地法への移行に伴い、各地で大型SCが次々と誕生しているが、一方既存のSCでは長引く消費低迷で空きスペースを抱え苦戦が伝えられている。
そんな中でも新しい商材を開発し、虎視眈々と有名SCへの出店に狙いを定めている若い経営者も台頭し始めている。しかし、デベロッパーとそんな経営者が出会える機会は現実には少ない。
このような双方の需要を満たすべく「GOEL INFOCLUB」が発足した次第であるが、出店希望者の多くがSC未経験者であることを踏まえてこの度「ファッション販売」の紙面上でSCへ出店するための基本的な手引きを説明することに致しました。
|
|
|
2月号 |
|
先ず何処に出店するか? 百貨店、路面店、SCの出店条件の違いを述べることにしよう。今回は原則となる条件を説明し、裏技は次号以下に紙面を譲りたい。 百貨店の場合は、彼らが売場と什器を用意し実際に売れた物のみ百貨店が仕入れるというシステムで、これを消化仕入と呼ぶ。商品のみ百貨店へ納品する委託販売とは違い自社のスタッフで運営するのが原則である。この場合の値入れ率は地方で15-25%大都市圏では25-35%になる。よって国内の問屋から仕入れている小売店にはハードルが高いと言えよう。 SC(駅ビルも含む)の契約形態は先ほどの消化仕入れ契約と賃貸借契約の2種類があり、後者の場合保証金や敷金が発生し、家賃以外にも水道光熱費、共益費、販促費、電話代、駐車券負担等の固定経費がかかってくる。又家賃は歩率換算されるケースが大半であるが、その場合も百貨店の歩率1本(実売x歩率)とは違い殆どの場合最低保証が付く。この最低保証については次号にて紙面をさく。 路面店は固定家賃であるが、当然保証金や敷金が付随し、多くの場合保証金は2−3年ごとに償却されその都度償却分を打ち入れするか解約時に精算される。オーナーと仲介業者は契約時と契約更新時に礼金を受け取るが(何故お礼するのか未だにわからない)長期契約されると家賃収入のみになるだけなので2-3年ごとに新たなる礼金を求めてこの保証金の償却という手を考えたらしい。路面店でオーナー側に利益になる諸条件はオーナーに取り入ろうとする仲介業者の悪知恵から発生している場合が多い。路面店の注意する点はオーナーが借入金によって建物を建て、保証金も返済の原資となっていることが多く、退店時の保敷の返還に不安があることである。 路面店は経済的要因さえ満たせば商材は特に縛られることはないが、百貨店やSCは商材と見せ方にこだわるので貸し主側が選ぶ立場にあることを頭に入れて置いて欲しい。 これからお店を出そうとする皆様は以上3種類の形態から自分に合う条件を考慮してから決めて欲しい。なぜなら拙速は損害に結びつき、お店を閉めるときに必要なお金(第5回で詳細予定)は決して安くないからである。 |
|
|
|
3月号 |
|
催事契約と本契約 SC(ショッピングセンター)へ出店する際の契約として、催事契約と(一時使用契約)と本契約(テナント契約)がある。 催事契約は短期の売場使用契約であって、SCの店頭や百貨店の催事場で販売するイベントとは違うので混同しないこと。新設物件や有名テナントとの契約は本契約が原則であるが、既存のSCは実績のない業者と最初から本契約を結ぶリスクは避けてくる。つまり、売上が見込み違いであったり、その他トラブルが起きたときに退店させにくくなる状況は敢えて望まず先ずトライアルとしての催事契約を選ぶのである。では、それぞれの契約条件について解説しよう。 <契約期間> 催事契約は1−6ヶ月が大半であるが、売上や見せ方その他SC側の諸状況によって更新される可能性は高い。一般的に数年後にリニューアルを考えているSCの場合そこそこ満足の出来る売上を作っていれば、リニューアル直前まで催事契約を引っ張れる可能性は高く、又この時本契約に移行できるチャンスもあり得る。それに対して、本契約は2−6年ぐらいが一般的であり、更新できる契約と、一旦契約を終了させて一から再契約を話し合う場合がある。 <保証金 敷金> 催事契約は基本的になしである。本契約も最近の経済状況を鑑み、保証金はなしで敷金の一部だけでOKというケースが増えている。 保証金がある場合は一等地やJR駅ビルを除いて坪当たり25−35万円は覚悟して欲しい。又、この保証金は路面店と違い退店時に100%返還される。敷金は全く千差万別であり、最近は坪数に拘わらず一括いくらというケースが目立つが、通常は基本家賃の3−10ヶ月程度と思って欲しい。勿論敷金も退店時に100%返還される。 <家賃> 固定家賃と変動家賃に大別される。固定家賃は字面通り1ヶ月いくらであり、又は1ヶ月いくらプラス売上の2−3%もあるが現在この方式は殆ど見かけられない。変動家賃とは売上に対して何%を払う、つまり歩率方式のことである。 催事契約の場合は「歩率1本}とよく言われるが、純粋に売上に対する歩率である。本契約にも歩率一本はあるが、通常は最低保証が付いてくる。これは平たく言えばデベロッパーに対し1ヶ月に売れる金額を保証をする事である。例えば坪当たり30万売る保証をすれば、それが売上基準額となり、最低家賃は「売上基準額x坪数x歩率」となる。勿論売上が基準額を超えれば後は歩率1本と変わらない。 よって売上に自信のあるテナントは基準額を上げ歩率を下げる交渉をするか、一定以上の売上に対しては歩率を下げる(逓減という)条件を付加しても良い。余談であるが、上記の全くの逆で逓増なる条件交渉もあることを付け加えておく。 歩率と最低保証を交渉するときはデベロッパーが当該物件でいくら欲しいのか、又はいくらで採算がとれるのかを前もって知っておかなければならない。それがわかればその答えを導くよう基準額と歩率に自社にとって有利な数字を当てはめればよいわけである。 <諸経費> 百貨店は歩率のみであるが、SCへの経費は上記家賃のみではなくその他の経費が発生する。これはデベロッパーにより様々であるが以下思いつくままに列記してみる。 水道光熱費(実費)、共益費(固定または歩率)、駐車券負担金、販売促進費(計算方法はデベロッパーにより固定、坪割、歩率、前年実績、またはそれらの複合等、差異有り)、クレジットカード手数料、ポイント負担金、電話代、ポスレジ又はGキャットリース代(持ち込み可能の場合もあり)、テナント会費、ゴミ処理金、ETC。 以上は毎月掛かるランニングコストであるが、入店時に発生するイニシャルコストとして以下の物がある。 サインボード変更費用、電話回線館内工事費(NTTではなくデベロッパーの指定業者が行うケースがあるので注意)、開店告知金、テナント会入会金等である。 以上諸経費はイニシャル、ランニングに拘わらず積極的に交渉してコストダウンを図って欲しい。 <退店予告期間> 開店時に閉店することを考えてスタートする人は希である。よって忘れがちな事柄に退店の通知がある。路面店でも同じであるが、テナントが一方的に閉店することは出来ず、必ず前もって閉店する旨を告げなければならない。それを何ヶ月前に予告するかが問題である。閉店する者は経営が行き詰まってから退店を告げるのが通常である。よって退店予告をしても店を閉められないのであれば倒産しか道はなく誰でも一日でも早く店を閉めたいのが人情であろう。但し、ペナルティを払えば、予告期間内に閉店することは可能である。逆に言えば、倒産、夜逃げなどの予告期間内の閉店はペナルティが課せられると思っていて欲しい。 ではどれくらい前に退店をデベロッパーに告げればよいか。デベロッパーにしてみれば出来るだけ長い期間をおいて次のテナントの準備をしたいであろう。従って双方の利益は真っ向から対立する。一般的且つ現実的には本契約が3−6ヶ月、催事契約が1−3ヶ月と考えればよいが、催事契約には退店予告期間が明示されていないケースが多いので出店前に必ずチェック。 <原状復帰義務> これは閉店する際お店をどの状態にしてデベロッパーへ返却するか、その規定である。これも退店予告と同様閉店することになって慌てるケースが多く見かけられる。 催事契約は原状ではなく現状、つまり入店時の状態に戻すのが一般的。本契約はスケルトンまで戻すかデベロッパーにその費用を支払って退店するかである。但し、催事契約でも前に営業していた店を居抜きで使用する時、原状復帰義務も受け継ぐ条件の場合もあるのでよく確認して欲しい。 以上催事契約と本契約の条件を個々に説明したが、自社のブランドを高めるために長期間営業する向きには、営業期間が保証されている本契約の方が安定した経営を目指せるので適当であるが、若い経営者で自己資金も少ない時などフットワークの良い催事契約は自分の能力を試すのに絶好の条件ではないかと思われる。 |
|
|
|
4月号 |
|
SCが欲しい店 欲しくない店 出店者も立地や条件、知名度等でSCを選ぶわけであるが、当然SC側も出店者を選別する。ではSCに選ばれるためにはどんな店作り、商品構成が必要になるかを今回は述べることにする。 SCが欲しい店とは? 店とは「見せ」である。当然商品の見せ方が巧いことが必須要件となる。出店者が出店の意志表示をするとSC側は必ず既存店をチェックしようとする、つまり商材は何か、見せ方は巧いか、スタッフは訓練されているか、店内に段ボール箱が積んであったり棚に飾られた商品は乱れていないか。彼らがもっとも気を配る点である。本来SCが欲しいのは売上であるが、先ず前述の見せ方があってその次に売上が重要ポイントとなる。SCにとっても痛し痒しではあるが、いくら売上が良くてもデパートの特設会場並の売場ではまずアウトである。 そしてSC本来の目的である売上を作ってくれる店となる。彼らにも坪当たりのコストが回収されなければ出店して貰っても意味がない。よってSC側は出店のプレゼンをする際に売り上げ予算を聞いてくるので彼らのコストをカバーする売上予算を明示しなければならない。例えば、彼らが坪当たり3万円は欲しいと思っていた場合、仮に10坪の店舗であれば最低家賃は30万円である。そこで売上予算は300万円で歩率は10%であったり、250万円の12%であったりする。しかし、SC側もコストをカバーするだけの売上では旨みがなく、当然利益の出る売上を要求してくるので先ほどの売上予算に多少の上乗せした金額をプレゼンしなくては出店は難しくなる。 話題性、ブランド力はSCが欲しがる要素である。特にOOブランド日本初上陸とかマスコミで話題沸騰とかいう商材は出店条件も有利になるケースが多い。 優れたスタッフが揃っていることも欠かせない用件である。例えば「今回の出店に際しましてはOO店の店長をこちらに回そうと思っております。彼女が又売上を作るんですよ」等のプレゼンはSC側に意欲的に映り得点は高くなる。 特殊な例として、売上は期待できそうにないし、何か素人っぽいのだが既存店を見ると内装は凝っているし商品が何処にもなく光っている、SC側もフロア全体がナショチェンばかりでは面白味に欠けるので、こういう店をスパイスとして入れてみようと冒険してくれるケースもある。 SCが欲しくない店とは? 記述の「SCが欲しい店」の裏返しであるが敢えて列挙すれば以下のようになる。 売上は作っているのだが専門店の経験が無く売場作りに不安がある。例えば催事専門の業者や現在問屋業がメイン等の場合である。このような会社は路面店や比較的ハードルの低いSCで見せ方を勉強してからチャレンジするのもひとつの手であろう。又、会社自体に体力が無く、1−2ヶ月の営業で売上が悪いとすぐさま退店の意志表示をするのもSCに嫌われる要因となる。 最後に当然ながらビジネス感覚の低い経営者が挙げられる。商品の感度は高くても時間にルーズとか契約目前で簡単にキャンセルをする等のビジネスマンとしてのセンスを疑われるような経営者である。 |
|
|
|
5月号 |
|
本契約の留意点 SCへ出店する場合、経済的な負担もなく身軽に出退店出来る「催事契約」とは違い、営業期間は保証されているとは言え様々な条件が付く本契約には注意すべき点が多くあり、出店時のみならず退店することもあり得る事を念頭に入れ説明したい。 初期投資として保証金や敷金が発生するのは当然として、それ以外に内装費の掛かる範囲の問題がある。既存物件に入店する場合は現状の内装に手を加えるか、一からやり直すかだけの判断であるが、新規物件の場合以下のように工事区分が分けられテナントが負担する部分はどこなのかをよく確認しなくてはならない。 ・甲工事(A工事ともいう)・・・建物の構造部分 ・乙工事(B)・・・・・・・・・・・・空調、配電、電話回線等基本的な部分 ・丙工事(C)・・・・・・・・・・・店内の床、壁、天井、照明及び什器 甲工事は勿論デベロッパーが行い、丙工事はテナントの負担となる。問題は乙工事である。原則としてはテナント負担であるが、これも交渉次第で一部若しくは全部をデベロッパーに持ってもらえるケースもある。 負担する工事部分が決まると内装業者の問題が生じてくる。つまり、多くのデベロッパーがその業者を指定してくるのである。当然自社の懇意の業者よりは割高になる場合が多い。そこで、自社の業者を指定業者の下請けとして認めてもらい、内装管理費として工事費用の5ー7%を指定業者に支払う裏技もあるので是非覚えていて欲しい。 その他に新規物件のイニシャルコストとして建設協力金や開店の告知費用、オープニングに関わる費用の一部負担などがあるが、では前述の内装費も含めて如何にこれら費用を切りつめるかが問題となる。この解決方法は決して早めに手を挙げないことに尽きる。出店を決断した時から保証金や敷金の支払いが始まる。これらを払ってしまえば、キャンセルすることは実際上は不可能であり、自ずから以後生じる交渉はデベロッパーのペースで進むことになる。更に付け足せば、開店が近づいても出店者が決まっていないスペースの条件は日毎緩和され、当然工事が進んでくれば空いているスペースのみ工事をしないわけにもいかず、特に乙工事の部分は一斉に工事が行われるので開店が近づけば乙工事は既に終わっているケースが出てくるわけである。以降のケースはギャンブル性が高くなるが更に開店ぎりぎりまで交渉を続ければ丙工事もデベロッパーが持つ事もある。 出店する際に退店時のことまで考える人は希であろう。しかしこちらも大きな問題を孕んでいる。第一に「退店の予告」である。催事契約なら1−3ヶ月前(ほとんどは1ヶ月)に通知すればよいが本契約のそれは6−12ヶ月前が原則である。殆どのケースが店の売り上げが落ち赤字に耐えられなくなってから退店を考える。しかし、退店を決意してから更に6−12ヶ月その店を営業しなくてはならない。ペナルティを払えば退店もできるが、この6−12ヶ月はよほど体力がなければ耐えられるものではない。特にそこの店だけで生計を立てている場合など結果は明らかである。 退店予告をクリアしたとしても次に待っている問題は原状復帰義務である。本契約の場合は店舗をスケルトン状態に戻すことが契約条件に例外なくうたってある。ここで又、指定業者の影がちらついてくる。原状復帰には通常3−10万円/坪掛かると思っていて欲しい。閉店するにも費用は相当掛かることも覚悟して本契約に望むべしと私は敢えて言っておく。 そして最後に保証金と敷金の返還であるが、契約によっては退店後すぐには戻らないこともあるので要注意。又、経済不況の昨今である、中小のデベロッパーによっては相次ぐ退店により返還金を既に失っていることも考えられる。 本契約をするときは以上のことをよく考えて慎重に事を運んで欲しい。赤字に転落してから1年間営業を続け、原状復帰の費用を払い、そして保証金が返ってこなかったら.....こんな悪条件の中で生き延びられる企業を私は知らない。 |
|
|
|
6月号 |
|
催事契約の内容はこれだけ違う!! 催事契約については3月号で詳しく述べたが、その内容はデベロッパーの社風、体力、営業方針によって様々である。以下は催事契約で一定レベルの店造りと売上を前提とした契約状況である。 *流通系A社・・・本契約の早期締結が同社の至上命題のため1−3ヶ月くらいの契約期間となるが、そのかわり歩率のみの条件を提示してくれる。短期間のため売上、店造りはさほどうるさく云わない。実際は同条件で延長となるケースが多い。 *商社系B社・・・若干の固定経費は必要となるが、6ヶ月契約が可能である。期間も中期なので店造りには気を使わなければならないが、ある程度の売上を維持していれば1ヶ月毎の自動延長となる。 *不動産系C社・・・B社同様若干の諸経費が発生するが、電気代は歩率に含まれる。やはり6ヶ月契約で見せ方売上に問題がなければ再度6ヶ月の契約更新となる。 *電鉄系D社・・・一部店舗、又は1Fなどの好立地を除いてほぼ歩率のみの条件で1−3ヶ月の契約となる。見せ方にはさほど気を配らなくても同条件で延長有り。 *電鉄系E社・・・歩率はかなり安めに設定されるが、諸経費はほぼ本契約並に課せられる。契約期間も原則6ヶ月は保証してくれ見せ方、売上が標準以上であれば6ヶ月の延長も可能。但し、売上実績によって若干の条件見直しがあることもある。 *流通系F社・・・1−3ヶ月契約が原則。見せ方店造りには万全の注意が必要で、且つ殆どの物件で最低保証や共益費など本契約に近い条件が付きデベロッパーを満足させるだけの売上が作れないと延長は難しい。但し、地方店等で苦戦している物件は比較的楽に再契約がある。 *流通系G社・・・催事契約でも最低保証の有無から条件交渉が始まる。又あまり長めの条件(3−6ヶ月)での契約には難色を示し、例え短期の催事契約でも利益を追求している姿勢が見受けられる。 以上のように一口に「催事」と言っても千差万別なのがわかる、概して共通していることは1−2ヶ月の短期にはデベロッパーもMDにはさほど拘らないが、3−6ヶ月となると本格的な見せ方やMDを要求されると云うことである。 消費不況の続く現状ではデベロッパーサイドもブランドや知名度で本契約を結ぶんでしまう拙速は避けたいところであり、どうしても無難な催事契約を取らざるを得ない状況がある。これも3月号で説明した通り1度本契約を結べば売れないMDでもデベロッパーは3−6年は目をつぶらなければならず、フットワークの軽い催事契約は彼らにとってもトライアルとして重宝な存在である。しかし、重ねて述べるが、如何に催事契約と雖もデベロッパーを嘗めてかかり「商品さえ並んでいれば彼らも満足するんだろ」の発想では出店者にもこの業界で未来はないと肝に命ずるべきであろう。 |
|
|
|
7月号 |
|
SCの現状 バブル崩壊後、地価の下落にから都心部に安価で便利な住宅が供給されるようになり、郊外の一戸建てやマンションを処分して、都心へ移り住む人が増えているという。SCにおいても状況はかなり似通った傾向にある。敢えて直感で言うと、都心部のSCが一人勝ちの様相を呈しているように思われる。例えば「海ほたる」の開通で、木更津(千葉)の人々が一気に対岸の川崎(神奈川)へ買い物へ出かけ、木更津のデパート(そごう)スーパー(ダイエー)SC(エポ)は閉店を余儀なくされた。 このように今までは遊びに行くには一泊しなければならなかった地域が、交通機関の発達により日帰り、若しくは通過点となり、東京から100KMくらいに位置する甲府(山梨)、小田原(神奈川)、前橋(群馬)、宇都宮(栃木)などのSCはかなりの苦戦を強いられているようである。そして、バブル時代には人々は郊外に、経済的理由、若しくは自然回帰のブームに乗って住宅を争って求めたが、デベロッパーもその人々を追いかけて郊外の至るところに新しいSCを開店させた。しかし、前述した市場環境の変化によって、そのSCの多くが辛酸を嘗めているのが現状である。 では、これらの「人口移動」や「拠点の変動」以外の、個々のSCにおける問題点を挙げてみよう。先ず取り上げたいのが、大手電鉄系や、異業種などが遊休地を利用して作ったSCに見られるような「MDのマンネリ化」である。これは本体に体力があり、多少の売上減では倒産の危険性が少ない企業にありがちな現象といえよう。つまり、開発担当者が新しいMDにチャレンジするのを恐れ、俗に言う「おもしろくないSC」化に歯止めが掛からないのである。 具体的に例を挙げれば、「ラーメン屋が抜けたからラーメン屋を入れよう」「ウチは駅ビルの要素が強いから眼鏡店、DPEは揃えたい」「そんなわけのわからないMDはやめとけ」といった認識である。或いは新しいMDの提案が為されても「今は埋まっているから」の判断で、成長性のあるMDの芽が摘み取られてしまうケースも多々起きている。私が以上のような意見を述べれば彼らはこう言うであろう。「ビルの建設費を払って多くの従業員を抱えて、この消費不況の中敢えてリスクを犯すのは愚の骨頂である。君たちのような浮き草稼業にはわからない企業の事情があるんだ」と。しかし、過去に同じ論理で多くの企業や銀行や、保守的政治家達がどれだけ消え去っていったかを思い出して欲しい。不況の中、会社を飛び出し無鉄砲なチャレンジをして成功を収めた起業家も数多くいるのである。 |
|
|
|
8月号 |
|
売れない時代に如何にして売るか! 第1回から6回迄の連載に渡りSCについての特性から出店際の留意点を述べてきたが、勿論出店することが最終目的ではなく、出店したからには利益を確実に出さなければならないことは言うまでもない。出店を決意した時点では「売れるだろう」「採算は採れそうだ」という漠然とした展望を誰しも持っているはずである。しかし、長引く消費不況下では「売れるであろう」的な安易な発想は慎まなければならない。敢えて言えば、「売れないだろう」という判断で店をスタートして欲しい。では「売れない」前提でいかにして利益を確保していけばよいのか、最終回に当たって着実に利益を出す方法を考えてみたいと思う。 粗利益の確保 一般に小売店は、問屋やメーカーから商品を仕入れ、それを消費者に売り、その間の利ざやで成り立っている商売である。その粗利益はMDによる違いはあるにしても通常30-40%と考えても大きな的外れはないであろう。そしてその利幅の中で人件費、家賃、光熱費などを支払い、残った分が経営者(会社)の利益となるわけである。 そこで過去の連載で述べてきたことを思い出して欲しいのだが、SCの家賃は通常12-15%の売上に対する歩率で課せられる。よって粗利から家賃を差し引けば、手元には15-28%粗利が残り、それで人件費や諸経費を払う算段になる。早番と遅番のスタッフ2名を雇えば、賞与、社会保険費は別にしてに約43万円前後の人件費が必要となってくるので、仮に諸経費はゼロの条件で契約を交わしたとして、この15-28%が人件費に匹敵するよう計算すれば最低必要な売上額が算出されるわけである。つまり、430,000割る0.15は2,866,666。又、430,000割る0.28は1,535,714となり155-290万の売上でも諸経費が払えないどころか、経営者の手元には何ら利益は残らない計算となる。家賃と人件費を払って経営者にいくらも残らない状況はビジネスとして成立していないと言わざるを得ない。 では、例えば問屋やメーカーに交渉をしたり、直輸入で仕入れることにより粗利が55-65%となったらどうであろう。前記の式を用いれば、12-15%の家賃を払った残りの40-53%が人件費となればよいのであるからして、430,000割る0.4は1,075,000であり、430,000割る0.53は811,320となる。よって82万から110万の売上で最低限人件費は捻出できる計算となる。結論を言えば、粗利が50%以上確保できないMDでSCへ出店してはいけないと言うことである。でなければあなたの汗と労力は家賃と人件費で消えてしまうであろう。 経営者、本部利益の確保 経営者、若しくはその会社の本部は店舗経営のために労力を払っているのであって、当然利益を得るべきである。極論すれば、この利益は店舗経営の経費の一部と見なすべき物なのである。従って店舗コストの内訳は家賃、人件費、経営者の利益、諸経費、原価と大別され、「取り敢えずトントンでよい」とか「儲かったら会社に入れてくれ」的な発想でビジネスをスタートさせては決してならない。利益は予め考えなければならない一定の数値であって、言い換えれば確保しなければならない本部経費なのである。 しかし読者はこの方法に不自然さを感じるであろう。「都合よく人件費や固定経費が10%や15%になるのか」と。つまり、人件費が40万円で売上が100万円なら人件費率は40%となり、売上が400万円ならそれは10%となるように、人件費率は売上の多寡によって変動するからである。その解答が次章で述べる催事契約とアウトソーシング(外部委託)である。 全ての経費を歩率化せよ ここで催事契約の条件、「オール込み込み○%」を思い出して欲しい。要約すれば、家賃、光熱費、共益費、その他の個別経費全て込みで、例えば20%で契約すればよいのである。現状、空きスペースが既にあり、カラ家賃が発生しているとすれば、上述の条件はデベロッパーにとって決して悪い話ではない。次に解決すべきは人件費であるが、いくら雇用が不安定な時代とは言え、スタッフに売上の20%で働いてくれとは言えないであろう。そこで活用すべきが、アウトソーシングによる販売代行である。つまり、特定の業者に売上の20%で販売業務を請け負って貰うのである。彼らも売上の20%では赤字に陥る危険性があるのでいくつかの工夫が必要になってくる。例えば、同ビル内で既に店舗を経営していてスタッフの使い回しが可能な人を選ぶとか、同ビル内で複数の店舗を任せるとか、又は、弊社の最も得意とするパターンであるが、大きな面積の店を複数の店舗で共同運営し、1販売代行者に全ての店舗の売上の20%を支払う方法もある。以上のような仕組みによって販売代行者が売上の20%で採算が採れるよう算段していくのである。 これにより、家賃+諸経費が20%、人件費が20%となり、売上額に拘わらず店舗の経費率は40%と一定に保たれる。経費の合計が40%であれば売上の60%は経営者(本部)へ確実に戻ってくることになり、その60%の内から原価率を差し引いた分が経営者(本部)の利益となるのである。逆転の発想により、経営者は(本部)は直営店に6掛けで商品を卸すと考えていただきたい。これで何故40%に拘るかが理解してもらえると思う、もし店舗経費率が55%でも採算が採れていたとしても敢えて45%掛けで卸をしようとする経営者はそう多くないからである。よって、「店舗の経費率は40%以内に、MDの原価率は50%以内に」が私の考えである。 以上の仕組みが完成すれば、売価100%−経費率40%−原価率50%=利益10%の数式が成り立ち、原価率が下がれば、下がるほど経営者(本部)の取り分は増加していくわけである。 これまでと同じ店舗経営の方法ではこの消費不況の中では決して「勝ち組」にはなれず、減る一方の売上を嘆くことなく、新しい仕組みを各々作り上げ値下げ競争の中でも生き残って欲しい。 <最終回> 長らくのご愛読ありがとうございました。新しい連載企画も予定しておりますので、次回「ファッション販売」紙面でお会いできる日をお待ちしております。 梶浦康一
|